絵本「ちいさなき」の読み聞かせで始まった当会。この本が、ご参加いただいた子どもたちやお父さんお母さんの心を代々木の森に寄り添わせてくれました。何もなければ気づくことが出来ない実生苗木が「赤ちゃんの樹」に、構内の植栽木が「お母さんの樹」へと変わったのです。どんなに大きな樹でも初めは草にも隠れてしまうほどの小さな赤ちゃんの樹。でも、うつりゆく季節の中で、お母さんの樹と一緒に紅葉したり、落葉したり、新芽をつけたり、と小さくても立派な樹。赤ちゃんの樹は、大きくなるにつれて、虫や鳥や小動物のお友達が増えていく。そんなことを幼児向けに優しく語りかけてくれる絵本「ちいさなき」を入り口に代々木の森へと入りました。
さぁいよいよ、赤ちゃんの樹とお母さんの樹を探す探検にカエデの森へ出発です。今日の探検に参加してくれたのは、5家族11人の親子。どんなワクワクが待っていたのでしょうか。
カエデの森に入るには、ちょっとした儀式がありました。それは、目隠しをして、聞こえてくるもの、香るもの、肌や足裏の感触をしっかり感じること。私たちを取り巻くいつもの世界が不思議な森の世界に変わります。お父さんお母さんは、しっかりと子どもの手をつないでカエデの森に案内するお役目です。「見えなくて怖い!」「危ないよ~」という声が、「んっ?なんの音?」「あっ、地面が柔らかくなった!」「何か臭くなった(土の臭いかな?)」「鳥の声がした」にだんだんと代わてきます。案内役のお父さんお母さんも、道すがら不思議なものを見つけては、子どもたちを案内しています。「これなぁーんだ?」とお母さん。アカツメクサの群落の前に娘さんとしゃがんで、お花の部分に手を当ててあげています。「んっ?!なんだ?」「何かいい匂いがするような・・・。」と娘さん。目で見ることと同じくらい、いやそれ以上の発見が得られたかもしれませんね。
さて、ようやく代々木の森のカエデの森に到着。目隠しを外すと、この時季のオリセン名物「春もみじ」です。カエデの若葉と苔が緑色のカーテンとジュータンを創り出しています。「わぁ、みどりっ!」「きもちいい~」と子どもたち。目隠しの儀式が、カエデの森との出会いを一層の感動にしたのかもしれません。
ここで、子どもたちに探検隊には欠かせないある道具を配ります。それは虫眼鏡!「この道具を使って、赤ちゃんの樹や苔を探してみてね、気に入った赤ちゃんの樹を使って苔玉Bonsaiを創るからね」というと、、、あっという間にみんな虫眼鏡探検隊に早変わり。
カエデの森に散っていきます。地面に顔をくっつけるように、あちこちで苔や赤ちゃんの樹、虫を見ては「見て、見て~」「ほら、ここにいるよ!」「これはカエデの赤ちゃんの樹かなぁ~」「アリがいた!何で歩いているんだろう?」など発見の興奮を伝えてくれる子ども、落ちている枝や虫に興味を示して遊ぶ子ども、しばしカエデの森の中で自由な遊び時間です。
虫眼鏡探検隊は、お気に入りの赤ちゃんの樹を探すと、お父さんお母さんと一緒に優しく掘り出してあげます。余分な土をそっと崩して、根の部分を新聞紙に包んで、屋内に持ち帰ります。
お部屋に戻って、持ち帰った赤ちゃんの樹を使った苔玉Bonsaiづくりが始まります。腐葉土と砂をブレンドした土で泥団子をつくって、持ち帰った赤ちゃん苗木の根を包み、その上から苔を貼りつけて、剥がれないように糸でクルクルと巻き、お水に浸けて出したら出来上がりです。この作業は、専らお父さんお母さんの作業になってしまったようですが、子供たちが見つけて選んだ苗木でつくる苔玉Bonsaiは、嬉しそうにみえました。立派な親子の作品の出来上がりです。
「きせつ×おんがく×そとあそび」のワークショップは、イベントその物も大事ですが、それ以上にその機会がご家庭内の季節の感度を高め、子供の普段の遊び環境の中に一つでも、体験的要素を増やしてもらうことが目的であると考えています。子どもたちは、普段の遊びの中に何かを見出し、成長していく、そこにちょっとした大人の仕掛けがあると楽しみが倍増すると考えるからです。だから毎回宿題つきです。今回のお題は苔玉を一年育て、若葉→紅葉→落葉→冬芽→新芽→また若葉、の四季のサイクルを親子で体感する事です。お題を通して、森や動植物、四季の体験が、もっと身の回りにある、自分のものになってくれたら嬉しいです。今回の苔玉Bonsaiがそのためのコミュニケーションツールになることを期待します。