春の太陽の日差しをいっぱい浴びた満開のさくらの花の下、元気に駆け回る子どもたちと一緒に“さくら”遊び。今日のお遊びメニューは、
一、桜の小枝を使った草木染めで桜のハンカチづくり
一、花びらあつめ
一、桜の香りあつめ(チンキづくり)
の三本立て。
《桜の小枝を使った草木染》
(樹に隠れた色たちを見つけよう)
子どもたちの目の前には、山盛りの桜の小枝。

はじめに、この茶色い小枝からどんな色が出てくるのかみんなで一緒に考えてみると、

「枝の色と同じ茶色!」「黄色!」「緑かな?」「わたしピンクが好き!」
と、みんなちがっていろんな答えが。でも実は、どれもみんな正解なのです。桜のつぼみが花開く直前の桜の樹は、枝先に、自分の中にあるすべての色を集めて開花の準備をしています。木肌の茶色や黄色、オレンジ、これから出てくる葉っぱの緑や青、そして花びらのピンクなどなど。

今回のワークショップでは、ピンク色のハンカチを作りたいので、桜の小枝が持つたくさんの色の中からピンクだけを取り出した染液を準備して、布を染めてみます。(染液はスタッフが用意しました。方法は別記)。

「ピンクだけを取り出す」と一言でいっても簡単ではありません。何故でしょう?それは、枝を煮出して出てくる色には順番があるからです。初めに、茶色やオレンジ、次に黄色や緑、最後に赤やピンクの順番です。赤やピンクを取り出すのには小枝を鍋で煮て、そのお湯を捨て、また煮て、捨て、と何回か繰り返す必要があります。子どもたちとお父さんお母さんには、この事について、折り紙を使ってお話ししてみました。
今回は、子どもたちが染色に集中出来るよう、染液はこちらで用意しましたが、代わりに、枝を煮るとどんな色になるのか、実験し、何度も煮詰めて用意した染液の色と比べてみました。茶色とワインレッド、その差は子どもたちの目にもくっきりと映り、違いを体感できたようです。

(絞り染めに挑戦)
さて、ワインレッドの染液を鍋に満たして布を染めるのですが、その前に一仕事です。布に、ビー玉と紐を使って、模様を作る下準備をします。この方法で染めることを絞り染めといいます。きつく縛ったところは色が入らず、白い模様が浮き出るという仕組みです。ビー玉を使うのは、丸い形に浮き出させるためです。
この作業、子どもたちにはちょっとした挑戦でした。この年齢の子どもたちには、「結ぶ」のも難しいことですが、しっかりと紐で絞らないとくっきりした模様は出来ないからです。お父さんお母さんにも手伝ってもらいながら、なんとか出来たようでした。果たしてどんな模様になったのでしょう。

(煮込んで染めよう)

次にワインレッドの染料を入れ低温に温めたお鍋に絞り染め処理をした布を浸し、みんなでゆっくりかき混ぜます。(布は染めやすくするため、事前処理をしています。方法は別記)
「なんだか、魔法使いのお鍋をグツグツしてるみたい」と女の子。
みんな、棒で布をかき混ぜながら染まるのを待ちました。ツンツンつっつく子、ぐるぐる回す子、棒で水面をぴしゃぴしゃ叩く子とこれまたいろいろです。しばらくはお鍋にお任せです。この間に外遊びで使う、新聞紙のハンドバッグを作りました。

さぁ、染め上がりの時間がやって来ました。火傷しないように気をつけて取り出したら、染め色を定着させるための液(媒染液と言います)に浸けます。
そのあと、絞りをほどきます。どんな模様に出来上がっているのか、ワクワクの瞬間です。
「あっ、丸くなってる!」と大喜びの子ども、
「丸じゃない!」とビックリの子ども、
どれも世界に一つだけのとっても貴重な模様が出来上がりました。このあと、水道の流水で、余分な染液を良く洗い流して完成です。

《桜の下でそとあそび》

ここからは、「そとあそび」の時間でした。体を動かしたくてウズウズしていた子どもたち、お待たせしました。新聞紙で作ったハンドバッグと先ほど染め上げたハンカチを手に、お部屋から外へ走り出していきました。

さて、代々木の森の木立のあいだにロープを張って、自分たちで染めたピンク色がかったハンカチをかけて乾かしました。木漏れ日を浴びながら、優しい風に揺れるみんなのハンカチ。乾くとピンク色をもっと鮮やかに見せてくれます。

その間、子どもたちは、桜の花びらを新聞紙のハンドバッグに集めました。この時季の桜は幹から直接花を咲かせているものもあり、子どもたちにはちょうど良いのです。手の届かないところはお父さんに抱っこしてもらってとっている子もいました。
ところで、子どもたちは、何かを集めるという遊びがたまらなく楽しいようで飽きるようすは少しもみられませんでした。そのうち、花びらをばらし始めて枚数を数えたり、お父さんお母さん用に用意しておいたハーブティーに入れて自分で飲んでみたり、いろいろな楽しみ方が広がっていきました。

《桜の香りあつめ》
この遊びも少し落ち着いたところで、集めた桜の花を瓶に詰めて、ウォッカで漬け込みました。これを「チンキ」と言います。2週間もすると、アルコールが桜の香りを引き出してくれ、水で薄めてスプレーしたりすると、お部屋の中が桜の香りで満たされます。

さて、子どもたち、夢中になって集めてきた桜の花を今度は小さな手で瓶に詰めました。そこにウォッカをかけ入れると花びらは柔らかく透き通ったピンク色になりました。いかにも美味しそうで「もう食べられる?」と聞く子どもたち。これは強~いお酒でもあるので、残念なら子どもたちは口にできません。出来上がりを待って、香りを楽しみましょう。蓋をして、自分だけのオリジナルラベルを作って貼り、布で蓋を覆って出来上がりです。

(桜と一緒にお家に帰ります)
乾いた桜染めのハンカチをたたんで、桜の花のチンキと一緒に持ち帰ります。幼稚園や保育園で、満開の桜の森をたまに思い出しながら使ってくださいね。

さて、その後の子どもたち。数日後に保護者の方に行ったアンケートによると、子どもたちが最も興味を持って遊べたのは、「桜の小枝を煮る体験」、「花びら集め」、だったそうです。確かに、当イベント実施者の目から見ても、間違いなく楽しく、子どもたちが主体的に遊んでいたのが思い返されます。また、こんなお話を聞くことが出来ました。

「お友達との花びら集めが楽しかったことを繰り返しお話してくれています。」
「幼稚園のお弁当包みとして、ハンドタオルとして毎日使っています。」
「草木染めのお話やチンキづくり、屋外でのハーブティーパーティーなど、大人でもとても楽しめました。」
「今後も季節に応じて家族で外遊びを楽しみたいです。」

春には春の外遊びとおうちを彩る季節の遊びがたくさんあります。これからも季節に応じた遊びで家族楽しく暮らしてもらえたら嬉しいです。