ほとんどの植物には”毒”がある?~うめしごとから考える植物と生活の智慧~

 みなさんこんにちは、ハーブおじさんです。今日のタイトルがおどろおどろしいですが、怖がらずに読んでみてください。
 このタイトルにしたのは、先日開催した「うめしごと体験ワークショップ」の参加者さまから頂いた質問にきちんとお応えしようと考えたからです。お時間をいただいてしまい申し訳ありませんでした。そのご質問とは
 「青梅には毒がある。と聞いたことがありますが、シロップ漬けだけで大丈夫ですか?」
です。ということでさっそく見ていきましょう!
 回答からしますと「はい、大丈夫です」となりまして、その場でもお答えさせていただきました。今日はこの回答の裏側とその周辺を探って記事にしてみたいと思います。

植物の毒ってなに?青梅の毒ってなに?

 ほとんどの植物には毒が含まれているといってもよいと思います。しかし、この毒が誰に対しての毒なのか、どの程度の毒なのかということでずいぶんと異なります。植物には多少の毒素が含まれているのは、自身の防御、種の保存、繁栄のためだといわれています。動物と違って植物は動けませんから、毒などの化学物質を出して身を守っているわけです。

 例えば、トリカブトという一見きれいなお花を咲かせる植物がありますが、その全体にはアルカロイド系毒素が含まれています。猛毒でフグの毒に次ぐ強毒素と言われています。これを食べた動物は死に至り、トリカブトという種が捕食されて全滅することを防ぎます。ちょっと過激な戦略ですがそういう作戦をとっていることが想像されます。

ヨモギもちとパン

 他にも、身近なところでいえばハーブ類の有効成分は化学物質で毒といえます。この場合の毒も人間に対してというより天敵である昆虫に対しての毒ということになります。人間にとって良い香りは昆虫にとってとっても嫌な臭いであったりします。また、ある特定の昆虫の好きな香りを出すことでそのハーブにとって天敵となる昆虫を捕食してもらうという作戦もとったりしています。私たち人間は、そうした植物の微量の毒素(化学物質)を巧みに利用して薬として活用してきたのです。ハーブの代名詞”ヨモギ”もその代表格です(ヨモギの活用についてはこちらの記事”足下の自然から楽しもう③いつもの道でヨモギ摘み”をご覧ください)。

 さて、話を青梅に戻しましょう。青梅にも毒があります。”青酸”という物質が主に種の中に存在します。ウメの側から考えると
 「果実は食べてもいいけどタネはたべないでよ」
 ということになりましょうか。タネまでガリガリと食べられてしまうと、新しい樹木となる新芽が生まれませんからね。そんな形で動けない植物は化学物質を毒として用いて生存戦略を図っているのです。

なぜシロップ漬けで青梅の毒がきえる?

 青梅に含まれる毒素は「アミグダリン」というそうです。これが私たちの体内に入ると特定の酵素と結合し「シアン」という猛毒に変化します。この毒素は記事にも書いたように、未成熟の実がタネを守るために含んでいます。そのため、実が成熟してタネを守る必要がなくなると毒素も分解されて消えてゆきます。この性質を活かして、青梅を早く成熟させて毒素を分解させてしまおうというのが、塩漬けや砂糖漬け(シロップ漬け)、アルコール漬けの考え方になります。
 なので、漬け込んで日数が経ったものであれば毒素も分解されて安心というわけです。そして、溶け出させて毒を抜いたわけでもないのでそのシロップやお酒には毒素が含まれているわけではないので安心です。

昔から受け継がれた生活の技はすごい

 しかし、初めからこのような方法で毒素を分解して食べた。ということではないでしょうから、私たちの祖先の経験値が生みだした生活の智慧なのですね。私は、こうした伝統的な技法による食文化は、生活の智慧の結晶のように思います。当プロジェクトでは、季節に応じた伝統的食文化を紹介、体験するワークショップを提供していきます。体験した子どもたちには、こうした伝統に改めて思いを巡らすことで、将来の問題解決のアイデアにつなげられる大人に育ってもらいたいと考えています。